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《シリーズ卒論への道》 第四回「史資料探訪 国立民族学博物館」

《シリーズ卒論への道》第四回では大阪研修について記録する。二泊三日に渡る日程のなかで収穫の多い充実した時間を過ごすことができた。以下では、特に記憶に残った事柄を紹介したい。

 一点目は、国立民族学博物館研修である。通称「民博」と呼ばれるこの博物館は太陽の塔で有名な万博記念公園のなかに建てられており、世界各地の人びとの暮らしや生活、文化に焦点を当てた標本資料やモノ資料が数多く展示されている。博物館施設の規模は世界最大を誇り、全ての展示物をじっくり鑑賞にはいくら時間があっても足りないほどであった。特に印象に残った展示として、「音楽」を挙げる。音楽は古くから人びとを魅了していたようで、これに関連する展示は数多く、非常に充実していた。時代や場所、文化や宗教など、さまざまな要因によってリズムや音色、楽器の素材や作り方が異なり、それら全てに意味が込められていた。そして、実物でないものもあるにせよ、それらの展示物を直接自分の目で見ることで、音楽に対する人びとの思いや生活文化を実感した。前回の公文書館に続き、「目で見る、肌で感じる」大切さを知る貴重な機会であった。

 二点目は、平ゼミの絆である。二泊三日の日程のなかで大小様々にトラブルが発生した。旅程を決める過程での意見衝突、寝坊により集合時間の遅れ、そして予想以上の疲弊など、数々の課題に直面したが、臨機応変な対応と優しさのこもった支え合いによりそれらを乗り越えることができた。私は、今回の研修により、ゼミ生同士の絆が深まったことを強く確信している。この先卒論を書き上げていく上で、この仲間たちとは数多くの時間と苦楽を共にすることになるだろう。そんな彼らと、今回の研修を経て絆を深められたことは、これからのゼミ活動に向けて大変意義のあるものだった。

 以上が今回の大阪研修で特に印象的で記憶に残った事柄である。この経験と思い出を活かし、卒論完成に向けて、この先も仲間たちと切磋琢磨しながら歩んでいきたい(文責:平ゼミ3年・哲平)。

 

「探訪記その1」

 さまざまな国や地域を対象とする展示物があるなかで一際目に留まったのは、ブラジル・バイーア州サルバドールで撮影された1枚の写真である。同所に存在するボンフィン教会は奇跡の教会とも呼ばれており、フィタと呼ばれるリボンをつけて神に祈ると、願いが叶うとされている。この写真のなかで異様な雰囲気を放っている大量の人物像や足などは、願いが叶った人びとがお礼として自らの写真や病気が治った体のパーツを奉納しているそうだ。一見、ギョッとするその見た目の裏には、人びとの願いや感謝の気持ちが込められているのである(文責:平ゼミ3年・鈴木)。

 

「探訪記その2」

 この写真は、西ジャワ(インドネシア)に住むスンダ族の伝統的な人形劇、ワヤン・ゴレックで使用される木彫り人形である。一緒に設置されていた展示動画では、民族音楽であるガムランを伴奏として、語り歌いながら人形を操る様子が紹介されていた。人形一つひとつに細工が施されており、今にも一斉に動き出しそうな迫力であった。2本の棒を使いこれらの人形を操るワヤン・ゴレックの世界観は圧巻であり、スンダ族の人々が愛し、今世まで残し続ける理由が窺える(文責:平ゼミ3年・稲川)。

 

「探訪記その3」

 写真に映っているのはカザフスタン(右)とモンゴル(左)の女子学生が着る制服である。日本の学生用制服は各学校の特徴を表している。一方、社会主義諸国では国の理想を共有するためにデザインされ、文化的な特色も地域ごとに加えられている。カザフスタンの女子学生用制服ではエプロンがデザインされている。これは女性は働かず家で家事をするものだという考えが表現されているのかもしれない。日本と海外の学生用制服にはそこまで違いがないと思っていたが、海外ではその国の思想がそれらのデザインに表れていることには驚きであった(文責:平ゼミ3年・森)。

 

「探訪記」その4

 多くの展示のなかでとくに目に止まったのはアイヌ民族が手掛けた木彫品である。一枚の板を立体的に彫刻し、ファスナーの細かな部分まで表現している。ファスナーの開いた部分にはアイヌの特徴的な文様が彫られている。作成者の貝澤徹は北海道平取町に生まれ、木彫りをしていた父と祖父の姿を見て育ち、アイヌの先人達の残した民具や儀礼具から刺激を受け、独自のメッセージをこめた木彫を作成している。

 国立民族学博物館の研修では新たな発見が目白押しであった。物事をこれまで見ていた角度とは異なる角度から眺め、いままで見えていなかったものを発見した、このような経験はかならずや卒業論文に活かされると確信している(文責:平ゼミ3年・柴田)。