2019年12月8日(日)、東京経済大学国分寺キャンパスで開催された、歴史学会主催の第44回シンポジウム「スポーツ/身体と権力の歴史」に参加してきました。歴史学会は、「植民地と大学」(第41回)、「宗教」(第42回)、「君主」(第43回)など、ここ数年権力の歴史をテーマにしたシンポジウムを開催しており、今年はスポーツと身体という観点から権力の歴史が議論されました。当日は、西田彰一「〈やまとばたらき〉から見えてくるもの『皇国精神実修』と『身体の健康増進』のあいだ」、金誠の「スポーツと植民地朝鮮〜支配と抵抗を象徴する身体〜」、松尾俊輔の「20世紀初頭北米YMCAの世界展開とスポーツ〜南米からの『文明化の使命』論再考」の報告につづいて、コメンテーターである福田宏からの質問、そして全体討論という流れでシンポジウムは進行しました。西田の報告は、これまではナショナリズムの高揚手段として考えられていた「やまとばたらき」には、近代医学に基づいた運動が取り入れられていることを指摘し、精神だけでなく身体の健康法としても優れた運動であったことに、それが広く普及した要因が求められました。金の報告は、1920年代に朝鮮で運動場が作られ、そこで開催された朝鮮神宮競技大会が内鮮融和の象徴として機能していたことを明らかにしました。そして松尾の報告は、北米YMCAがラテンアメリカで推進したスポーツプログラムを取りあげ、それらはキリスト教化運動としてこれまで解釈されてきたが、そうした運動は主にアジアで展開されており、ラテンアメリカにおいては宗教とは無関係であったことが提示されました。
今回のシンポジウムに参加して、スポーツが単なる身体強化や健康増進のためのものでなく、政治や統合の手段として利用されてきたことに気づくことができました。私の卒業論文のテーマが「地域社会とスポーツ」なので、今回のシンポジウムに参加したことはとても貴重な機会となり、執筆意欲が掻き立てられました。あと2ヶ月ほどで卒業論文の最終提出になりますが、最後まで気を抜かずに納得のできるものを作り上げたいと思います(文責:平ゼミ 4年 木村)。