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スポーツ・メディア研究のデザインをめぐって

 

2018年1月20日から21日にかけて、卒業論文の調査旅行のため、京都大学で開催されたミニ・シンポジウム「スポーツ・メディア研究のデザインをめぐって」に参加しました。このシンポジウムでは、佐藤彰宣氏が最近上梓した研究書『スポーツ雑誌のメディア史 ベースボール・マガジン社と大衆教養主義』(勉誠出版、2018年)を素材として、スポーツ雑誌を切り口に日本人のスポーツ観をどのように読み取るかということを、メディア史研究者が様々な角度から議論を深めていくものでした。研究書のメインテーマは教養から娯楽に変化していったスポーツ雑誌の系譜を追求することでしたが、書評では結論を示すためのデータを安易に単純化し、他の解釈の可能性を無視しているのではないかといった批判が挙げられていました。それをたたき台として、当日のシンポジウムでは「文武両道観の変化」「プレイヤーか非プレイヤーか」「参加形式(読み方)の変化」といった解釈ができるのではないかという意見が出ていました。私は、このシンポジウムで、研究者の徹底した批判的な態度と根拠に基づいた見解を目の当たりにしました。「そもそもスポーツ雑誌の定義とは何か」「スポーツと教養は対立しているものなのか」「メディアの特性は製作物だけでは語れないのではないか」など、データや具体的な事例に基づいて自分の見解を提示していました。このような研究者の態度をつぶさに体験し、私は現在執筆している卒業論文において、先行研究や通説、自分の導きたい結論を安易に信用し、簡潔な結論を求めすぎていたのではないかと反省しました。歴史研究者としての自らの課題を多く見つけられた実りのある調査旅行となりました(文責:平ゼミ3 年 樋口)。